
1:猫に必要な3大寄生虫予防とは?
猫の健康を守るために、特に注意すべき寄生虫が3つあります。それが「フィラリア」「ノミ」「ダニ」です。これらは、見た目では気づきにくく、症状が出る頃にはすでに感染が進行しているケースも少なくありません。特に春から秋にかけては、これらの寄生虫が活発になる時期。対策を怠ると、大切な愛猫が深刻な健康被害を受ける可能性があります。
1-1フィラリア・ノミ・ダニとは何か
まず、それぞれの寄生虫がどのようなものかを理解しておきましょう。
- フィラリア:蚊を媒介に体内へ侵入し、心臓や肺に寄生する糸状の寄生虫です。猫の体内では犬ほど成長しませんが、少数でも命に関わる重篤な症状を引き起こすことがあります。
- ノミ:猫の被毛に寄生し、皮膚を噛んで吸血します。激しいかゆみや皮膚炎の原因となり、ノミアレルギー性皮膚炎を引き起こすことも。
- ダニ(特にマダニ):植物や草むらなどに生息しており、猫の皮膚に吸着して血を吸います。ダニが媒介する感染症(例:重症熱性血小板減少症候群〈SFTS〉)も問題視されています。
1-2それぞれの感染経路とリスク
これらの寄生虫は、外出しない猫でも感染する可能性があります。
- フィラリア:感染した蚊が窓から侵入することが原因になります。網戸があっても100%防げるわけではありません。
- ノミ:外から帰宅した飼い主の服や靴に付着して室内へ。ペットホテルや病院の待合室などでも感染リスクがあります。
- ダニ:草むらを歩いた後の靴や、他のペット(犬など)との接触によって持ち込まれることがあります。
どれも「外に出ないから大丈夫」と油断してはいけません。予防をしていない猫ほど、万が一感染したときに対処が遅れ、重症化しやすくなります。
1-3猫への症状や影響の違い
各寄生虫が引き起こす主な症状を比較すると、以下のようになります。
寄生虫 | 主な症状 | 放置した場合の影響 |
---|---|---|
フィラリア | 咳、呼吸困難、元気消失 | 突然死するケースもある |
ノミ | かゆみ、脱毛、皮膚炎 | アレルギー体質悪化、ストレスによる食欲不振 |
ダニ | 吸血部位の腫れ、発熱 | 重度の感染症(例:SFTS)に発展する可能性 |
これらの寄生虫は、放っておくと単なる不快感にとどまらず、命に関わる疾患の原因にもなります。だからこそ、早めの予防が必要なのです。

2:室内飼い猫にも寄生虫対策が必要な理由
「うちの猫は一歩も外に出ないから、寄生虫の心配はない」と思っていませんか?実はそれ、危険な誤解かもしれません。完全室内飼いであっても、寄生虫のリスクはゼロにはなりません。ここでは、なぜ室内飼いの猫でも予防が必要なのか、その理由を詳しく解説します。
2-1屋内でも虫は侵入する
室内にいるから安全、とは限りません。特にノミやフィラリアを媒介する蚊は、網戸のすき間や玄関の開閉など、ちょっとした隙から室内に入ってきます。また、マダニは飼い主の服やバッグ、靴の裏などにくっついて持ち込まれるケースもあります。
近年では都市部でもノミやマダニの目撃情報が多く、郊外だけの問題ではなくなっています。たとえ外に出ない猫であっても、室内は完全に密閉された空間ではない以上、虫の侵入を100%防ぐのは難しいのです。
2-2無症状で進行する寄生虫もある
フィラリア症は、猫に感染しても初期にはほとんど症状が出ないことがあります。しかし、寄生虫が肺や心臓にたどり着くと突然、咳や呼吸困難、最悪の場合は突然死を招くことも。症状が出たときにはすでに手遅れということもあるため、定期的な予防が何より重要です。
ノミもまた、猫の被毛の奥に隠れて繁殖し、飼い主が気づかないうちに広がっていることがあります。1匹いれば、数日で100匹以上に増えるとも言われており、放置すると家中に広がってしまいます。
2-3発見が遅れると重症化する危険性
寄生虫の被害は、発見が遅れるほど深刻になります。特にマダニによる感染症(SFTSなど)は、人間にも感染する人獣共通感染症であり、猫を守ることは飼い主自身や家族の健康を守ることにもつながります。
さらに、複数の寄生虫が同時に寄生した場合、猫の免疫力が大きく低下し、他の病気にかかりやすくなるといった悪循環も起こります。だからこそ、リスクが「ゼロではない」以上、**定期的な予防こそが最善策**なのです。

3:フィラリア予防の基本知識
「フィラリア」と聞くと犬の病気というイメージが強いですが、猫も感染する可能性がある寄生虫です。しかも、猫の場合は犬よりも診断が難しく、突然死することさえある危険な病気。ここでは、フィラリア症の特徴や予防方法について詳しく見ていきましょう。
3-1フィラリアとはどんな病気?
フィラリア(犬糸状虫)は、蚊に刺されることで感染します。感染した猫の体内で心臓や肺の血管に寄生し、重大な呼吸器症状を引き起こします。猫の体ではフィラリアが完全に成虫になるケースは少ないものの、それでも1~2匹の寄生で命に関わることもあるのが特徴です。
主な症状は以下の通りです:
- 咳
- 呼吸が荒くなる
- 元気がない・食欲が落ちる
- 嘔吐(他の病気と間違いやすい)
- 突然死(肺動脈塞栓)
猫のフィラリア症は「猫フィラリア症候群(HARD症候群)」と呼ばれ、肺の炎症や血栓によって突然命を落とすケースも報告されています。症状が他の病気と似ているため、発見が遅れがちなのも問題です。
3-2予防薬の種類と投与時期
フィラリアは感染前に予防することが大前提。感染後は効果的な治療法がないため、必ず予防薬を使用しましょう。猫用フィラリア予防薬には以下のようなタイプがあります。
- スポットタイプ(首元に滴下):皮膚に塗るタイプ。簡単に使えて多くの飼い主さんに人気。例:「レボリューション」「ブロードライン」など。
- 経口薬(飲ませるタイプ):猫に飲ませる錠剤やおやつタイプ。投与にコツが必要ですが、確実な効果が期待できます。
投与のタイミングは、蚊が出始める1カ月前から、蚊がいなくなった後1カ月までが一般的。例えば、本州では5月〜11月ごろまでが予防期間とされています。1カ月に1回、定期的に投与することが大切です。
3-3動物病院と市販薬の違い
フィラリア予防薬は、動物病院で処方されるものと、インターネットや店舗で購入できる市販薬の2種類があります。それぞれに特徴があります。
項目 | 動物病院 | 市販薬 |
---|---|---|
信頼性 | ◎(獣医師の診察・処方あり) | △(正規品の見極めが必要) |
価格 | やや高め | 比較的安価 |
安心感 | 副作用や相談がしやすい | 使用上の注意は自己判断 |
市販薬の中には、正規品ではない並行輸入品や模造品も混じっていることがあるため、信頼できるショップからの購入が必須です。不安がある場合は、必ず獣医師の診察を受けて処方してもらうのが安心です。

4:ノミ・ダニ対策の正しい方法
ノミやダニは、猫にとって非常に身近で厄介な外部寄生虫です。かゆみや皮膚炎だけでなく、感染症を引き起こす原因にもなり、放置すると被害が拡大するリスクもあります。特に春〜秋にかけては活動が活発になるため、早めの対策がカギとなります。
4-1ノミ・マダニの季節と活動時期
ノミやダニは、気温が13℃を超えると活発に動き出します。一般的には3月〜11月が予防の推奨期間ですが、暖かい地域や暖房の効いた室内では一年中発生することもあります。
特に気をつけたいのは梅雨から夏にかけて。湿気と気温が高まることで、ノミの繁殖力が急激に高まり、1匹から数百匹に増えることも珍しくありません。マダニも草むらや公園、ベランダの鉢植え周辺に潜んでいる可能性があります。
4-2予防薬のタイプと使い分け
ノミ・ダニ対策に使用される薬には以下のような種類があります。
- スポットタイプ:首の後ろに数滴垂らす液体タイプ。広範囲に皮膚をカバーし、簡単に使える。
例:フロントライン プラス、ブロードライン(フィラリア予防も対応) - スプレータイプ:ノミの駆除に即効性があるが、使用時に猫が嫌がる場合も。
- 経口薬(錠剤・おやつ型):内服タイプ。投与後に効果が全身に現れ、薬を舐め取る心配がない。
ブロードラインは、フィラリア・ノミ・ダニ・内部寄生虫(回虫・条虫)まで幅広く対応できるため、特に「全部まとめて予防したい」という飼い主さんに人気です。一方、フロントライン プラスはノミ・マダニ対策に特化しており、投与後24時間以内に駆除効果が期待できます。
4-3猫が嫌がらない投与のコツ
ノミ・ダニ予防薬の多くは、月に1回の定期投与が必要です。しかし、中には投与時に逃げたり暴れたりする猫も多いもの。以下のポイントを押さえることで、スムーズに使えるようになります。
- タイミング:猫がリラックスしているとき(食後や寝起き)を狙う
- 場所:猫の首の後ろ(舐め取れない位置)にしっかりと垂らす
- ご褒美:終わった後におやつをあげて「良い経験」として記憶させる
また、投与後すぐにシャンプーすると効果が薄れる場合があるため、48時間は洗わないのがベターです。製品ごとの注意点は必ずパッケージや説明書を読んで確認しましょう。
猫の性格や生活環境に応じて、「続けやすい予防方法」を見つけることが、寄生虫対策の成功の鍵となります。

5:予防薬の比較と選び方ガイド
フィラリア・ノミ・ダニの予防薬にはさまざまな種類があり、「どれを選べばいいのか分からない」と悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか。ここでは、主要な製品をタイプ別に比較しながら、猫の性格や生活環境に合った選び方をご紹介します。
5-1スポットタイプ vs 経口薬:どちらがいい?
猫用の予防薬は主に「スポットタイプ(皮膚に塗布)」と「経口薬(飲み薬)」の2種類があります。それぞれにメリットと注意点があります。
タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
スポットタイプ | 投与が簡単/即効性がある/複数の寄生虫に同時対応できる製品も | 皮膚に違和感を感じて嫌がる猫も/投与後のシャンプー制限あり |
経口薬 | 薬を舐め取る心配がない/苦手な猫にはおやつタイプもある | 飲ませるのが難しい猫には不向き/選べる製品が少ない |
猫の性格や飼い主の扱いやすさを考慮して選ぶのがポイントです。じっとしていられる猫ならスポットタイプ、投薬が難しい猫にはおやつタイプの経口薬も選択肢となります。
5-2主要ブランド別 比較(フィラリア・ノミ・ダニ対応)
日本国内で使用されている猫用予防薬の代表的な製品を比較してみましょう。
製品名 | 対応寄生虫 | タイプ | 特徴 |
---|---|---|---|
ブロードライン | フィラリア・ノミ・マダニ・回虫・条虫 | スポットタイプ | 総合的な予防が可能。1本で全てをカバーしたい人向け。 |
レボリューション | フィラリア・ノミ・耳ダニ・内部寄生虫 | スポットタイプ | 皮膚疾患の予防にも強く、軽めの体重の猫にも使いやすい。 |
フロントライン プラス | ノミ・マダニ | スポットタイプ | フィラリア予防は不可。即効性と駆除効果が高い。 |
「どの虫を防ぎたいのか」「どのくらいまとめて対策したいか」を基準に選ぶのがコツです。たとえば、フィラリアまでしっかり予防したいならブロードラインやレボリューション。ノミ・マダニ中心ならフロントラインが手軽です。
5-3価格・効果・安全性の観点からの選び方
最後に、予防薬を選ぶ際に考慮したい3つのポイントをご紹介します。
- 価格:1回あたりのコストは1,000〜2,500円程度が目安。まとめ買いでお得になる場合も。
- 効果:広範囲に対応している製品ほど利便性は高いが、猫の体質に合うかが重要。
- 安全性:使用前に体重を確認し、適正量を守ること。持病や妊娠中の猫には注意が必要。
また、初めて使う製品は動物病院で相談した上で選ぶのが安心です。副作用の有無や使い方をしっかり確認し、愛猫にとって最適な方法で継続しましょう。

6:いつ始める?年間の予防スケジュール
予防薬は「いつから始めればいいの?」という質問も多く寄せられます。寄生虫の活動は季節や地域によって異なるため、猫の生活環境に応じた対策スケジュールを立てることが大切です。ここでは、年間を通じた予防の考え方と、状況別のスケジュール例をご紹介します。
6-1猫のライフスタイル別の対策
猫の生活スタイルによって、必要な予防の範囲や頻度が異なります。
- 完全室内飼い:基本的にはノミ・フィラリア・マダニの予防でOK。予防期間は3月〜11月が目安。
- ときどきベランダ・バルコニーに出る:ノミ・ダニのリスクがやや高くなるため、通年予防も検討。
- 外出自由の猫:ノミ・マダニ・フィラリアに加え、内部寄生虫の定期検査も推奨。通年予防が理想です。
特に春のはじめには「ノミの卵がふ化する前」に対策を始めておくと、繁殖を未然に防げます。
6-2地域や気候による違い
日本は南北に長いため、蚊やノミ・ダニの活動時期も地域によって異なります。以下は目安です。
地域 | 予防開始 | 予防終了 |
---|---|---|
北海道・東北 | 5月中旬〜 | 10月中旬まで |
関東・中部・近畿 | 4月〜 | 11月末まで |
九州・沖縄 | 3月〜 | 12月末〜通年 |
地域の気温や湿度、蚊の発生状況に応じて柔軟にスケジュールを調整しましょう。動物病院では地域ごとの目安を案内してくれるため、相談して決めるのが安心です。
6-3多頭飼いの場合の注意点
複数の猫を飼っている場合、寄生虫は1匹から他の猫に広がるリスクがあります。そのため、全頭に対して同時に予防を行うことが重要です。
- 1匹だけに投与しても意味がない
- 定期的に全員の体重を量り、適切な量を投与
- 投与のタイミングを統一すると管理が楽になる
また、予防薬の使い分けによる誤飲・誤用を避けるためにそれぞれの猫に投与した薬の記録を残しておくと安心です。市販のペット用健康手帳やスマホアプリの活用もおすすめです。

まとめ|愛猫の健康を守るために、今すぐ始めたい予防対策
フィラリア・ノミ・ダニは、見えないところで猫の健康を脅かす存在です。たとえ完全な室内飼いであっても、寄生虫が“ゼロ”になることはなく、気づかないうちに感染している可能性もあります。
この記事では、猫にとって危険な3つの寄生虫とその予防法について、以下のポイントを中心にお伝えしました。
- フィラリアは蚊が媒介する致命的な感染症。無症状でも突然死のリスクあり
- ノミ・ダニは室内にも侵入し、かゆみや感染症を引き起こす
- スポットタイプや経口薬など、猫に合った予防薬選びが重要
- 地域や気候に応じた年間スケジュールで継続がカギ
- 多頭飼いの場合は全頭同時に予防することが大切
予防は、早ければ早いほど安心です。愛猫の健康を守るのは、日々の小さなケアから。信頼できる動物病院で相談したり、正規品の予防薬を購入することから始めてみましょう。
大切な家族である猫が、いつまでも元気に過ごせるように。今日からできる予防対策を、ぜひ実践してくださいね。

よくある質問(FAQ)
Q1. 室内飼いでもフィラリアの予防は必要ですか?
はい、必要です。蚊はわずかなすき間からでも室内に入ってきます。たとえ外に出さない猫でも、蚊に刺されるリスクがあるため予防が推奨されます。
Q2. ノミやダニを見たことがないのですが、予防するべきですか?
ノミやダニは肉眼で見えにくく、猫の被毛に隠れていることがあります。症状が出る前に予防しておくことで、被害を未然に防げます。
Q3. どの予防薬を使えばいいのかわかりません。
猫の年齢・体重・体質により適した薬は異なります。動物病院で相談するか、信頼できるメーカーの製品(例:ブロードライン、フロントラインなど)から選びましょう。
Q4. 予防薬は毎月あげないといけませんか?
ほとんどの製品は1カ月に1回の投与が推奨されています。フィラリアなどは継続して予防しないと効果が落ちるため、毎月のスケジュール管理が大切です。
Q5. 薬を嫌がる猫にはどうすればいいですか?
スポットタイプは首の後ろに塗ることで舐め取りを防げます。また、おやつ型の経口薬など、猫の性格に合わせて選ぶと投与が楽になります。
Q6. 副作用はありますか?
製品によってはまれにアレルギー反応や皮膚の赤みなどが出ることがあります。異変を感じたらすぐに使用を中止し、動物病院に相談しましょう。
投稿者プロフィール

- 猫ライター
- 子供のころから獣医を目指していましたが、家庭の事情でその夢を諦めざるを得ませんでした。
現在はアメリカンショートヘアの愛猫「しずく」と一緒に暮らしています。しずくとの日々の生活から得た知識も交え、猫に関する魅力的な記事を執筆しています。
現在、愛玩動物飼養管理士の資格取得に向けて勉強中です。更なる知識の向上と猫の健康と幸福を守るために、専門知識を学び、より多くの猫と飼い主さんに役立つ情報を提供したいと思っています。
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