猫に「絶対言ってはいけない言葉」はある?――”言葉”より怖いのは「言い方」と「状況」

モグニャンキャットフード
猫に「絶対言ってはいけない言葉」はある?――"言葉"より怖いのは「言い方」と「状況」
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「猫に絶対言ってはいけない言葉ってあるの?」という疑問は、多くの飼い主さんが一度は抱く素朴な問いです。結論から言えば、猫は人間の言葉を”文章の意味”として理解するというより、声のトーン、表情、動き、空気感から「安全か/危険か」「うれしいか/怖いか」を判断しています。つまり猫にとって本当にダメージになるのは、特定の単語というより脅し・否定・見捨てるニュアンスを強く含んだ声かけなのです。

この記事では、最新の動物行動学と獣医学の研究をもとに、猫との信頼関係を壊しやすい”NGな言い方”と、同じ状況で使える言い換え、さらに効果的な「しつけ方」までを解説します。

まず知っておきたい:猫は「言葉の意味」より「感情」を読む

1. まず知っておきたい:猫は「言葉の意味」より「感情」を読む

猫は、飼い主の言葉を辞書的に理解しているわけではありません。しかし近年の研究により、猫が言葉に込められた感情やニュアンス、声のトーン、表情を驚くほど敏感に察知することが明らかになっています。

パリ第10大学の研究(2022年)では、猫は飼い主が「ペット向けの話し方(赤ちゃん言葉のようなトーン)」で話しかけたときには反応するものの、大人に話すような普通の口調や見知らぬ人の声にはほとんど反応しないことが判明しました。参考:ナショナルジオグラフィック

さらにイタリア・バーリ大学の研究(2020年)では、猫が人間の「喜び」と「怒り」の感情を、声のトーンと顔の表情を統合して認識できることが証明されています。特に「怒り」の声を聞いた猫は、耳を伏せたり身を低くしたりといった明確なストレス反応を示しました。参考:PMC研究論文

さらに驚くべきことに、2023年の研究では、猫が人間の汗に含まれる化学物質から「恐怖」や「喜び」といった感情を嗅ぎ分けられることも分かっています。恐怖のにおいを嗅いだ猫は重度のストレス行動を示し、右の鼻孔(右脳半球につながる)を多く使う傾向がありました。参考:Noldus研究紹介

つまり、同じ単語でも穏やかに言うのと怒鳴るのとでは、猫の受け取り方がまったく変わります。猫が逃げる、固まる、耳を伏せるなどの反応が出ているなら、それは「言葉が悪い」のではなく、あなたの感情が脅威として伝わっている可能性が高いのです。

信頼を削る"4タイプ"の声かけ――「NGワード」になりやすい言い方

2. 信頼を削る”4タイプ”の声かけ――「NGワード」になりやすい言い方

ここでは「この単語は100%禁止」というより、猫の安心感を削り、信頼関係を壊しやすい言い方のパターンを整理します。

(1) 拒絶の突き放し:「あっちへいけ!」

猫が甘えてきたとき、邪魔をされたときに、つい強い声で突き放してしまう経験は誰にでもあるでしょう。猫は言葉の意味を完璧に理解しなくても、スキンシップを拒まれた”空気”を敏感に受け取ります。これが繰り返されると、猫は飼い主との距離を置くようになったり、ストレスや不安を抱えやすくなります。

言い換え例:低く静かな声で「今はむずかしいよ」「あとでね」と伝え、手で軽く合図して距離を作る。ポイントは感情的にならないことです。

(2) 見捨てる/脅す:「捨てるよ!」

冗談のつもりでも、怒りが混ざると猫には”危険な気配”として伝わります。こうした脅し文句は猫の不安を強め、信頼関係を損なう原因になります。

言い換え例:「それは困るよ」「やめてね(短く)」。”あなたを失うよ”という脅しではなく、”この行動を止めてほしい”という明確な意思表示に焦点を当てます。

(3) 侮辱・嘲笑:「どんくさい!」「ばか!」

猫は人間のように単語の定義を理解しなくても、飼い主の落胆・軽蔑・不機嫌といった感情は読み取ります。猫がジャンプに失敗したあと、急に毛づくろいや爪とぎを始めることがありますが、これは「恥ずかしさをごまかしている」わけではありません。動物行動学では「転位行動」と呼ばれ、「自分のしたいことができなかった」という葛藤や動揺を、別の行動で紛らわせるストレス緩和メカニズムです。参考:ねこのきもち

言い換え例:言わないのが最適。どうしても声が出るなら「大丈夫」と短く。失敗時は”声”よりも”環境”を見直しましょう(滑りやすい床、段差の高さ、動線など)。

(4) 不快・否定のラベル貼り:「汚い!」

粗相や嘔吐など、猫が困っている場面で大声や強い否定をぶつけると、猫は恐怖を覚えやすくなります。まずは猫の体調や環境(トイレの清潔さ、ストレス要因、病気の兆候)を確認し、落ち着いて対処することが大切です。

言い換え例:「大丈夫だよ」と優しく声をかけて片付け、必要なら受診や環境調整を検討します。猫に伝えるべきは”叱責”より”安全”なのです。

「言葉」以上にNG:大声で怒鳴る・叩くは逆効果になりやすい

3. 「言葉」以上にNG:大声で怒鳴る・叩くは逆効果になりやすい

猫のしつけで特に避けたいのが、大声で怒鳴る、叩く、霧吹きで水をかけるといった強い威圧です。獣医行動学の専門誌『Today’s Veterinary Practice』(2024年)では、こうした罰は「禁忌(contraindicated)」と明記されています。罰を与えると、猫は「なぜ叱られているのか」を理解できないまま、飼い主を「威嚇してくる危険な存在」として認識してしまいます。参考:Today’s Veterinary Practice

英国心理学会(BPS)の研究レビューでは、罰を使う家庭の猫はそうでない猫に比べてトイレ以外で排泄する確率が12倍、新しい人や物、他の動物に対する攻撃性も大幅に高いことが報告されています。参考:BPS

ここで重要なのは、猫を叱る=言葉で説得する、ではないという点です。猫は「あとから説教」されても理由を結びつけにくく、むしろ「飼い主が怖い」という学習だけが残ってしまいます。動物行動学者のサラ・エリス博士は次のように述べています。「罰があなたから来ていると猫が認識すると、あなたは『罰を与える存在』と見なされます。これは関係を深刻に損ね、猫を不安状態に陥れ、極端な場合には猫があなたを恐れるようになります」

4. じゃあ、どう伝える?猫に伝わりやすい"代替アプローチ"

4. じゃあ、どう伝える?猫に伝わりやすい”代替アプローチ”

(1) まずは予防:猫がやりたくなる環境を作らない

猫の行動は本能に近いものが多く、「悪いことをした」というより「猫にとって自然な行動」であることが少なくありません。壊されたくない物は片付ける、登ってほしくない場所は物理的にガードする、爪とぎ場所を複数用意するなど、環境側で成功率を上げるほうが現実的です。

(2) 望ましい行動を強化する(ごほうび)

米国の保護施設での研究(2017年)では、100頭の猫に対してわずか5分×15回のクリッカートレーニング(正の強化)を行ったところ、79%がターゲットタッチ、60%が回転、31%がハイタッチを習得しました。食べ物への興味が強い猫ほど学習効果が高いことも確認されています。参考:PMC研究論文

猫は犬のように大げさな褒め言葉より、おやつなどの報酬を「ごほうび」として理解しやすい動物です。良い行動をした直後(数秒以内)に報酬を与えると、望ましい行動が定着しやすくなります。

(3) 叱る必要があるなら「短く・低く・その場で」

長い説教や感情的な怒鳴り声は、猫にとって情報量が多すぎて恐怖だけが残りがちです。もしどうしても制止が必要なら、短い合図(例:「ダメ」)を低めの声で、その場で。そして終わったら引きずらず、猫が落ち着ける距離感に戻すのがコツです。ただし基本は「怒鳴らない」を徹底しましょう。

5. 参考になる動画で学ぶ、猫のトレーニング

5. 参考になる動画で学ぶ、猫のトレーニング

最新の動物行動学に基づいた猫のトレーニング方法を学ぶなら、専門家による動画が参考になります。

よくある質問(Q&A)

よくある質問(Q&A)

Q1. 猫に絶対言ってはいけない言葉は?

「この単語は絶対禁止」というものはありません。猫にとって重要なのは言葉の意味より、声のトーンや感情です。特に「捨てるよ」など見捨てるニュアンス、突き放し(拒絶)、侮辱、強い否定を怒鳴り声で伝えるのは、猫の不安やストレスにつながりやすいので避けましょう。複数の研究で、猫は人間の感情(喜び・怒り)を声のトーンから識別し、それに応じて行動を変えることが証明されています。

Q2. 「ダメ!」は言っちゃいけないの?

単語そのものより言い方が問題です。低く短く、淡々とした合図として使うのはまだしも、怒鳴る・追いかける・叩くとセットになると、猫は「飼い主が怖い」と学習してしまいます。獣医行動学の研究では、大声で怒鳴ることは避けるべきとされています。猫は「なぜ叱られているか」を理解できず、恐怖だけが残るためです。

Q3. 猫は人間の言葉を理解しているの?

猫は言葉を辞書のように理解するというより、声の調子や表情、雰囲気から感情や状況を読み取ります。東京大学の研究(2019年)では、猫が自分の名前を他の単語から区別できることが分かりましたが、これは音素の違いを識別し、その音が過去の経験(餌や撫でられる)と結びついているためです。同じ言葉でも優しい声なら安心、強い声なら脅威として受け取ります。

Q4. 叱ったら猫に嫌われる?

叱り方によります。特に怒鳴る・叩くは「威嚇」と捉えられやすく、恐怖心から距離を取られたり、関係が悪化する可能性があります。英国心理学会の研究では、罰を使う家庭の猫は行動問題が12倍増加し、攻撃性も高まることが報告されています。やめさせたい行動がある場合は、環境調整や代替行動の誘導、望ましい行動へのごほうびを優先する方が安全で効果的です。

Q5. 猫が粗相や嘔吐をしたとき「汚い!」と言ってしまう…どうすれば?

まず、猫は体調不良や不安が背景にあることが多いと理解しましょう。そこで強い否定や大声を出すと、猫は恐怖を覚えやすくなります。落ち着いて片付け、原因(トイレ環境、ストレス、体調)を確認してください。必要なら受診を検討します。猫に伝えるべきは「叱責」ではなく「あなたは安全だよ」という安心感です。「大丈夫だよ」と優しく声をかけることで、猫のストレスを最小限に抑えられます。

まとめ

まとめ

猫にとって本当に怖いのは「特定の単語」より、怒鳴り声・脅し・拒絶の空気です。猫は飼い主の感情を敏感に読むからこそ、言葉を選ぶことは「猫を甘やかす」ではなく、安心を守るコミュニケーションなのです。

もし困りごとがあるなら、叱る前に「環境」と「成功体験(ごほうび)」を整えてみてください。それが結果的に、猫にも人にもやさしい近道になります。最新の動物行動学が教えてくれるのは、猫との暮らしに必要なのは「支配」ではなく「理解」だということです。


参考リンク


監修協力:国際的な査読付き学術誌(Scientific Reports、Animal Cognition、Applied Animal Behaviour Science等)の研究論文に基づく

投稿者プロフィール

2匹の猫と暮らす もふこ
2匹の猫と暮らす もふこ猫ライター
猫2匹と暮らす猫ライターの「もふこ」です。
物心ついたころにはもう猫とずっと一緒に暮らしてきました。
もう猫がいない生活は考えられないほど猫好きな私が20うん年猫と暮らしてきた中で得た知識や面白猫情報などをお伝えできたらいいなと思っています!
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