【猫の腎臓病に光明】治験終了のAIM新薬、年内実用化へ。「うちの子にも間に合って」と願う飼い主たちの希望

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【猫の腎臓病に光明】治験終了のAIM新薬、年内実用化へ。「うちの子にも間に合って」と願う飼い主たちの希望
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猫と暮らしている人なら、誰もが一度は心の片隅で不安を感じたことがあるはずです。「この子が年を取ったら、腎臓病になってしまうのではないか」と。実際、高齢猫の多くがこの病気に苦しみ、飼い主はその様子を見守ることしかできない無力感に襲われてきました。しかし今、その長い闇にようやく一筋の光が差し込もうとしています。

2026年1月7日、猫の腎臓病治療薬の治験が終了し、4月に国へ承認申請されることが明らかになりました。開発を進める「AIM医学研究所」の宮﨑徹所長は「臨床研究とほぼ同じ効果が得られた。できる限り早く実装したい」と語り、早ければ今年中の実用化も視野に入っているといいます。この知らせは、SNSを通じて瞬く間に全国の猫飼いたちに広がり、「やっと希望が見えた」「うちの子にも間に合ってほしい」という声が溢れています。

高齢猫の三分の一が腎臓病で亡くなる現実

高齢猫の三分の一が腎臓病で亡くなる現実

まず、私たちが向き合わなければならない現実があります。猫にとって腎臓病は、単なる「かかりやすい病気」ではなく、命を奪う最大の敵なのです。

ペット保険大手のアニコムグループが2023年にまとめた「家庭どうぶつ白書」によると、猫が0歳の時点では腎臓系を含む泌尿器疾患での死因はわずか3パーセントに過ぎません。しかし、5歳になると27.1パーセントに跳ね上がり、10歳で27.2パーセント、15歳では29.2パーセントと、いずれの年齢でも死因の第1位を占めているのです。つまり、高齢になった猫の約三分の一が、腎臓病で亡くなっているという衝撃的な統計が出ています。

猫の年齢別・泌尿器疾患死因率の推移グラフ

多くの飼い主が経験するのは、愛猫が食欲を失い、体重が減り、毛艶が悪くなっていく様子を見守ることしかできない辛さです。病院での定期的な点滴、療法食への切り替え、薬の投与と、飼い主も猫も懸命に闘います。しかし、慢性腎臓病は進行性の病気であり、これまでは「進行を遅らせる」ことが精一杯で、「治す」ことはできませんでした。そんな中で届いた今回のニュースは、まさに待ちに待った朗報だったのです。

25年越しの研究が明かした「猫の宿命」

25年越しの研究が明かした「猫の宿命」

なぜ猫はこれほどまでに腎臓病になりやすいのか。この疑問に対する答えを突き止めたのが、AIM医学研究所の宮﨑徹所長です。彼の研究の歴史は、1999年まで遡ります。

当時、スイスのバーゼル免疫学研究所で主任研究員を務めていた宮﨑氏は、多くの動物の血液中に存在する「AIM」というタンパク質を発見しました。AIMは「Apoptosis Inhibitor of Macrophage(マクロファージのアポトーシス抑制因子)」の略で、当初はマクロファージという免疫細胞の死を防ぐ働きがあると考えられていました。しかし、その後の研究を進めるうちに、AIMにはもっと重要な役割があることが分かってきたのです。

それは、体内の老廃物、いわば「ゴミ」を排除する掃除屋としての働きでした。人間や犬では、腎臓に老廃物が溜まるとAIMがそれに結合し、マクロファージという免疫細胞がそれを食べて掃除してくれます。この仕組みのおかげで、腎臓は常にクリーンな状態を保つことができるのです。

 AIMの働きを説明する比較図

ところが、宮﨑氏が東京大学大学院医学系研究科の教授として研究を続ける中で、2016年に衝撃的な事実が明らかになりました。猫のAIMは先天的に機能しないのです。正確に言えば、猫の体内にもAIMは存在するのですが、血液中で他のタンパク質(免疫グロブリンM)と強く結合しすぎていて、腎臓にゴミが溜まっても「掃除モード」に切り替わらないのです。その結果、猫の腎臓には老廃物が蓄積し続け、慢性的な炎症を引き起こし、最終的に腎不全に至ってしまいます。

この発見は、「なぜ猫だけが腎臓病になりやすいのか」という長年の謎を解き明かすものでした。そして宮﨑氏は考えました。「ならば、正常に機能するAIMを外から投与すれば、猫の腎臓を救えるのではないか」と。こうして、猫のための腎臓病治療薬の開発が始まったのです。

この研究成果はScience Portalでも大きく取り上げられ、国際的な注目を集めました。さらに詳しい研究内容は東京大学の公式サイトでも紹介されています。

3億円の寄付が支えた開発と、「みんなで作る薬」という志

3億円の寄付が支えた開発と、「みんなで作る薬」という志

しかし、新薬の開発には莫大な資金が必要です。大学での研究予算だけでは到底足りず、一時は開発断念も考えざるを得ない状況に追い込まれました。そんな宮﨑氏の窮状を知った全国の愛猫家たちが立ち上がったのです。

2021年夏、猫の腎臓病治療薬開発のための寄付が呼びかけられると、SNSを通じて情報が拡散され、わずか数日で3000万円以上が集まりました。最終的には3億円近い寄付が寄せられ、これが開発継続の大きな力となりました。「うちの子はもう間に合わなかったけど、これから腎臓病になる猫たちのために」「愛猫が腎臓病で苦しんでいる。どうか間に合って」という切実な思いが込められた寄付でした。

この支援を受けて、宮﨑氏は2022年に東京大学を退職し、一般社団法人「AIM医学研究所」を設立。さらに2023年には製薬ベンチャー「IAM CAT」も立ち上げ、資金調達を進めるとともに、台湾に製造拠点を確保しました。通常、大手製薬会社が行うような新薬開発を、大学発のベンチャー企業が進めるのは極めて異例のことです。しかし、宮﨑氏には「一日でも早く、猫たちに薬を届けたい」という強い思いがありました。

そして2025年5月、ついに治験が開始されました。全国26の動物病院の協力を得て、腎臓病を患う猫たちとその飼い主が治験に参加してくれました。参加した飼い主の中には、「最後の希望にかけたい」「少しでも研究に貢献できるなら」という思いで手を挙げた人も多かったといいます。

猫の慢性腎臓病ステージ分類表

「病状の進行が止まった」治験が示した希望

治験の対象となったのは、慢性腎臓病の4段階分類のうち「ステージ3」に該当する猫たちでした。ステージ3は、食欲不振や嘔吐、体重減少などの症状が現れ始め、血液検査の数値も明らかに悪化している段階です。通常、ステージ3からさらに悪化してステージ4(末期)に入ると、余命は数カ月とされています。実際、別の研究ではステージ4の猫の平均余命は103日程度というデータも出ています。

治験では、開発されたAIM薬を2週間おきに数回投与する方法が取られました。そして約半年後、宮﨑所長が「臨床研究とほぼ同じ効果が得られた」と語る結果が得られたのです。具体的には、AIM薬を投与された猫たちでは病状の進行が見られず、全身状態が改善したといいます。通常なら数カ月でステージ4に進行してもおかしくない状態だったにもかかわらず、病気が進まず、むしろ状態が良くなったのです。

さらに驚くべきことに、治験に先立って行われていた臨床研究で投与を受けた猫の中には、投与から5年以上経った今も元気に生存している子がいるそうです。これは、単に「延命」しているのではなく、「生活の質を保ちながら長生きしている」ことを意味します。かつて「腎臓病は治せない」と言われていた時代から考えると、まさに革命的な変化と言えるでしょう。

「病状の進行が止まった」治験が示した希望

実用化までのカウントダウンが始まった

現在、開発チームは最終段階に入っています。2026年3月には薬剤の安定性試験の結果がまとまる見通しで、その後4月には農林水産省に正式な承認申請が行われる予定です。動物用医薬品の承認審査には一定の期間が必要ですが、宮﨑所長は「早ければ年内の実用化も視野に入る」と話しています。

ただし、より現実的な見通しとしては2027年春頃になる可能性もあります。というのも、新薬の承認には安全性や有効性の厳格な審査が必要で、通常は申請から承認まで半年から1年程度かかるからです。それでも、長年「治せない病気」と言われてきた猫の腎臓病に対して、ついに治療薬が登場するという事実は、猫飼いたちにとって計り知れない希望となっています。

実用化までのロードマップ

興味深いのは、宮﨑所長が「皆さんと一緒に作ってきたので、名前も一緒に考えたい」として、薬の販売名を公募していることです。これは、この薬が単なる製薬会社の商品ではなく、全国の愛猫家たちの思いと支援によって生まれた「みんなの薬」であることを象徴しています。現在、IAM CATの公式サイトで名前の募集が行われており、多くの応募が寄せられているそうです。

今、私たち飼い主にできること

今、私たち飼い主にできること

新薬の実用化が近づいているとはいえ、それまでの間も、そして実用化後も、日常的なケアは変わらず重要です。腎臓病は早期発見が何よりも大切な病気であり、初期段階では目立った症状が現れないことが多いのです。

定期的な健康診断、特に血液検査は欠かせません。できれば7歳以上の猫は年に1回から2回、血液検査を受けることをお勧めします。検査項目の中でも、BUN(血中尿素窒素)とクレアチニンの数値は腎機能を示す重要な指標です。これらの数値が高くなり始めた時点で発見できれば、新薬が実用化された際により効果的な治療が受けられる可能性が高まります。

また、日常生活での水分補給も重要です。猫は元々砂漠の動物だったため、水をあまり飲まない習性があります。しかし、腎臓の健康を保つには十分な水分が必要です。水飲み場を家の中の複数箇所に設置したり、猫用の自動給水器を使って常に新鮮な水を用意したり、ウェットフードを取り入れるなど、工夫次第で水分摂取量を増やすことができます。

すでに腎臓病と診断されている猫の場合は、療法食への切り替えも検討する価値があります。腎臓病用の療法食は、タンパク質やリン、ナトリウムを制限することで腎臓への負担を減らす設計になっています。ただし、療法食への切り替えは必ず獣医師と相談しながら進めてください。

そして何より、最新情報をフォローし続けることが大切です。新薬の承認状況や実用化のタイミング、対象となる病期などの情報は、AIM医学研究所の公式サイト宮﨑所長のX(旧Twitter)アカウントで随時更新されています。また、mofooの猫ニュースでも最新情報をお届けしていく予定です。

猫から始まり、人間の医療へ広がる可能性

猫から始まり、人間の医療へ広がる可能性

実は、このAIM薬の開発が持つ意味は、猫の医療だけにとどまりません。宮﨑所長は「ネコ薬開発を通じてたくさんのことを学んだ。ネコに続き、ヒトの『治せない病』の治療につなげたい」と語っています。

人間の慢性腎臓病も、世界中で多くの患者が苦しむ難病です。日本国内だけでも1330万人以上の患者がいると推計されており、透析患者は年々増加しています。猫で得られた知見は、将来的に人間の腎臓病治療にも応用できる可能性があるのです。宮﨑所長は、資金調達ができれば1年半ほどで人間用の治験「フェーズ1」に入れる見通しだと話しています。

猫の命を救う研究が、巡り巡って人間の命も救うかもしれない。これは、動物医療と人間医療の垣根を越えた、まさに「One Health(ワンヘルス)」の精神を体現する研究と言えるでしょう。愛猫家たちの寄付と思いが、人類全体の医療の進歩に貢献するかもしれないのです。

希望を胸に、でも現実的に向き合う

希望を胸に、でも現実的に向き合う

2026年の年明けに届いたこのニュースは、間違いなく多くの猫飼いたちに希望を与えました。SNS上には「涙が出た」「うちの子にも間に合ってほしい」「やっと光が見えた」という声が溢れています。中には、「去年腎臓病で亡くした愛猫のために、これから腎臓病になる子たちが救われることを願っています」という、切ないながらも温かいメッセージも見られました。

しかし同時に、冷静に現実を見る必要もあります。新薬が実用化されても、すべての猫に効果があるとは限りません。治験はステージ3の猫を対象に行われましたが、より進行したステージ4の猫にどこまで効果があるのか、あるいは予防的に使えるのかなど、まだ分からないことも多いのです。また、薬の価格や投与頻度、副作用の可能性なども、実用化後に明らかになる情報です。

それでも、「治せない」と言われてきた病気に「治療の可能性」が生まれたこと自体が、大きな前進です。かつて、猫の腎臓病と診断されると、飼い主は「できるだけ進行を遅らせましょう」という説明を受け、いつか訪れる別れの日に怯えながら日々を過ごすしかありませんでした。しかし今は、「新しい薬が承認されるまで頑張ろう」「実用化されたら治療の選択肢が増える」という、前向きな希望を持つことができます。

愛猫の健康は、私たち飼い主にとって何よりも大切なものです。定期的な健康診断を怠らず、日々のケアを続けながら、新薬実用化のニュースを待ちましょう。そして、もし愛猫が腎臓病と診断されても、諦めずに獣医師と相談し、できる限りの治療を続けてください。新しい治療法は、すぐそこまで来ているのですから。

25年という長い年月をかけて、宮﨑徹所長と研究チーム、そして全国の愛猫家たちが協力して作り上げてきたこの薬が、一日でも早く多くの猫たちの元に届くことを、心から願っています。


この記事に関連する情報

開発の詳細を知りたい方へ AIM医学研究所の公式サイトでは、研究の背景や最新情報が詳しく紹介されています。また、IAM CATでは治験の進捗状況や薬の名前募集など、実用化に向けた具体的な動きが更新されています。

科学的な背景を深く理解したい方へ Science Portal「ネコになぜ腎不全が多いか解明」では、2016年の重要な発見について詳しく解説されています。さらに東京大学「腎臓の働きを改善する遺伝子『AIM』でネコの寿命が2倍に」では、研究の全体像が分かりやすくまとめられています。

猫の腎臓病についてもっと知りたい方へ mofooでは、猫の健康に関する記事を多数掲載しています。腎臓病の初期症状や日常ケアの方法、シニア猫の健康管理など、愛猫との暮らしに役立つ情報をお届けしています。


この記事で紹介した情報の出典

産経ニュース「<独自>ネコの腎臓病新薬、早ければ年内にも実用化へ」(2026年1月7日)
AIM医学研究所 公式サイト
株式会社IAM CAT 公式サイト
アニコム家庭どうぶつ白書2023

※この記事は2026年1月7日時点の情報を基にしています。承認申請や実用化の時期は変更になる可能性があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

投稿者プロフィール

ねことぴあ カオリ
ねことぴあ カオリ猫ライター
子供のころから獣医を目指していましたが、家庭の事情でその夢を諦めざるを得ませんでした。
現在はアメリカンショートヘアの愛猫「しずく」と一緒に暮らしています。しずくとの日々の生活から得た知識も交え、猫に関する魅力的な記事を執筆しています。
現在、愛玩動物飼養管理士の資格取得に向けて勉強中です。更なる知識の向上と猫の健康と幸福を守るために、専門知識を学び、より多くの猫と飼い主さんに役立つ情報を提供したいと思っています。
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子供のころから獣医を目指していましたが、家庭の事情でその夢を諦めざるを得ませんでした。
現在はアメリカンショートヘアの愛猫「しずく」と一緒に暮らしています。しずくとの日々の生活から得た知識も交え、猫に関する魅力的な記事を執筆しています。
現在、愛玩動物飼養管理士の資格取得に向けて勉強中です。更なる知識の向上と猫の健康と幸福を守るために、専門知識を学び、より多くの猫と飼い主さんに役立つ情報を提供したいと思っています。

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