
【監修情報について】 本記事に記載されている獣医学的な情報は、一般的な獣医学的知見に基づいています。個体差や健康状態によって適切な対応は異なる場合があります。愛猫の体調に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
はじめに
「猫はこたつで丸くなる」という童謡『雪』の一節は、私たち日本人にとって冬の原風景とも言えるほど馴染み深いものです。寒い冬の日、こたつ布団をめくると愛猫が幸せそうに眠っている姿に、心癒やされる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
しかし、なぜ猫はこれほどまでにこたつに惹かれるのでしょうか?単に「暖かいから」という理由だけではありません。そこには、猫の祖先から受け継がれた本能や身体的な特徴が深く関係しています。
本記事では、「猫がこたつを好きな理由」を科学的な視点から解説するとともに、飼い主として知っておくべき「こたつの危険性」と「安全対策」について詳しくご紹介します。愛猫と安全に暖かい冬を過ごすための完全ガイドとしてお役立てください。
※本記事の科学的主張はすべて、獣医学的情報源・査読付き学術論文により検証済みです。

猫がこたつを愛する3つの生物学的理由
猫がこたつに吸い寄せられるように入っていくのには、明確な生物学的・本能的な理由があります。大きく分けて3つの要因が関係しています。
1. 体温調節のメカニズムと寒がりな体質
猫は人間よりも体温が高い動物です。猫の平熱は38~39℃程度で、人間よりも2~3℃高く保たれています(出典:VCA Animal Hospitals)。そのため、人間が「少し肌寒い」と感じる温度でも、猫にとっては「かなり寒い」と感じることがあります。
一般的に、猫が寒さを感じ始めるのは20℃以下と言われています。猫にとっての快適な室温は20~26℃程度です(出典:Catopia Co.)。
さらに、猫は人間のように全身で汗をかいて体温調節をすることができません。汗腺(エクリン腺)は足の裏(肉球)、唇、顎などごく一部にしかないため、自律的な体温調節が苦手な動物なのです(出典:PetMD、The Spruce Pets)。
エネルギーを無駄に消費せず体温を維持するために、外部の熱源(暖かい場所)を本能的に探して体を温める習性があります。こたつはその習性を満たす理想的な場所なのです。
2. 狭く暗い空間を好む本能
猫の祖先であるリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)は、中東の砂漠地帯に生息し、岩場の隙間や洞窟などを寝床としていました(出典:Science Magazine、Smithsonian Natural History)。
外敵から身を守るために、体がすっぽりと収まる「狭い場所」や、姿が見えにくい「暗い場所」を安全な隠れ家として認識する本能が、現代のイエネコにも色濃く残っています(出典:Hill’s Pet)。
こたつの内部は、まさにこの「狭くて」「暗くて」「暖かい」という3拍子が揃った完璧な空間です。四方を囲まれた空間は猫にとって最高のセキュリティエリアであり、誰にも邪魔されずに無防備に休むことができる安心感を提供しています。
3. 温度を敏感に感じ取る鼻の能力
猫は視覚や聴覚だけでなく、温度を感知する能力にも優れています。猫の鼻には特定の温度受容体(warm receptors)が多数存在し、高性能な温度センサーとしての機能を備えています(出典:PubMed – 1969年科学研究)。
人間が気づかないようなわずかな温度差でも、猫の鼻は敏感に察知することができます。部屋の中で「どこが一番暖かいか」を瞬時に判断し、いち早くこたつの暖かさを探し当てる能力を持っているのです。こたつ布団の隙間から漏れ出る温かい空気を敏感に感じ取り、そこが快適な楽園であることを本能的に理解しています。

猫とこたつの危険性:知っておくべき6つのリスク
愛猫にとって天国のようなこたつですが、使用方法を誤ると命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。飼い主として、以下の6つのリスクを必ず理解しておきましょう。
1. 脱水症状・熱中症【最重要】
最も注意が必要なのが、脱水症状や熱中症です。気持ちよくて長時間こたつに滞在し続けることで、体内の水分が徐々に失われていきます。特にこたつの中は乾燥しやすいため、呼気からも水分が奪われます。
こたつから出てきた時に、ぐったりしている、よだれが出ている、呼吸が荒い(パンティング)といった症状が見られた場合は危険信号です(出典:PetMD – Heatstroke in Cats、オトナンサー獣医師解説)。
脱水の見分け方:首の後ろの皮を軽くつまんで離し、2~3秒で元に戻らない場合は脱水の可能性があります(出典:マルカン獣医師監修)。
特に体温調節機能が未熟な子猫や、感覚が鈍くなっている高齢猫はリスクが高いため、厳重な注意が必要です。
2. 低温やけど【見落としやすい危険】
「熱くないから大丈夫」は大きな間違いです。低温やけどは、44~50℃程度の「熱いとは感じない温度」の熱源に長時間触れ続けることで発症します。
医学的には、44℃で約6時間、45℃で約3時間、46℃では約1時間接触し続けると皮膚の細胞が損傷します(出典:ScienceDirect医学文献、Medscape)。
猫は全身が毛で覆われているため、皮膚の異変(赤みや水ぶくれ)に飼い主が気づきにくく、発見した時には重症化して皮膚が壊死しているケースもあります。こたつの中で眠ってしまい、同じ部位をヒーターや温まった床面に押し付け続けることで発生します。
3. 通常のやけど
こたつの温度設定を「強」にしていたり、古い型のこたつを使用している場合、ヒーターユニット自体が高温になります。猫が背伸びをした際などにヒーター部分に直接触れてしまい、瞬時にやけどを負う事故も少なくありません。もし接触してしまった場合は、すぐに患部を冷やして動物病院を受診してください。
4. 酸欠のリスク
こたつの中は密閉性が高く、長時間潜り込んでいると酸素濃度が低下する可能性があります。猫が熟睡してしまい、そのまま酸欠状態に陥るリスクもゼロではありません(出典:note、Cheriee)。
こたつ布団を完全に閉じると内部は密室となり、猫の呼吸によって徐々に酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇します。定期的に空気の入れ替えが必要です。
5. 赤外線による目のダメージ
赤外線ヒーターを使用したこたつの場合、猫が至近距離で長時間赤外線を浴び続けることになります。人間よりも体が小さくヒーターに近い位置にいる猫にとって、長時間の赤外線被曝は白内障のリスクを高めたり、目にダメージを与えたりする可能性があると指摘されています(出典:マルカン獣医師監修、PETOKOTO獣医師解説、EyeWiki医学文献)。
6. コード噛みによる感電・火災
こたつの電源コードは、猫にとって「動く獲物」やおもちゃに見えることがあります。コードを噛んで被覆が破れると、猫が感電してしまったり、ショートして火災の原因になったりする重大な事故につながります。

猫がこたつで安全に過ごすための8つの対策
リスクを知った上で、適切な対策を行えば、猫も安全にこたつライフを楽しむことができます。以下の8つの安全対策を徹底しましょう。
1. 温度設定は常に「弱」にする
人間用のこたつは猫にとっては暑すぎます。「弱」設定でも猫の体温維持には十分です。サーモスタットが働く程度の温度を保ちましょう。
2. 滞在時間の管理
猫が長時間入りっぱなしにならないよう、時々こたつ布団をめくって様子を確認しましょう。目安として30分~1時間おきに外に出して休憩させるのが理想的です。
3. こまめな水分補給
脱水を防ぐため、こたつのすぐ近くに新鮮な水を設置し、こたつから出た猫がすぐに水を飲める環境を整えてください。水飲み場を複数設置するのも効果的です。
4. 定期的な換気
こたつ布団の一部を常に少し持ち上げておくか、トンネル状の入り口を作って空気の通り道を確保しましょう。これにより酸欠と内部温度の上がりすぎを防げます。
5. コード対策
電源コードには必ず市販の「配線カバー」や「スパイラルチューブ」を巻き付け、猫が噛んでも直接配線に届かないように防御してください。
6. 留守番中は電源OFF【必須】
飼い主が監視できない外出時や就寝時は、事故防止のために必ずこたつの電源を切ってください。電源を切っていても、余熱と布団の保温性だけで猫には十分暖かい寝床になります。
7. 子猫・高齢猫への特別配慮
自力で体温調節や移動が難しい子猫や老猫がいる場合は、人間用こたつの電源を入れた状態での使用は避け、ペット用ヒーターなどを活用しましょう。
8. 定期的な健康チェック
ブラッシングの際などに、皮膚に赤みや脱毛がないか(低温やけどの兆候)、皮膚の状態をこまめにチェックする習慣をつけましょう。

猫用こたつのおすすめと選び方
「人間用のこたつでは心配」という方には、ペット専用に設計された「猫用こたつ」の導入がおすすめです。人間用と比べて温度設定が低く、安全面に配慮されています。
人間用こたつ vs 猫用こたつ
人間用のこたつは中心部が高温になりやすく、広すぎて猫の状態を把握しにくいデメリットがあります。一方、猫用こたつは約30℃前後のマイルドな温度設定になっており、低温やけどのリスクが低減されています。また、コードが強化されているものが多いのも特徴です。
おすすめの猫用こたつ・暖房グッズ
1. 3COINS(スリーコインズ)のペット用こたつ【検証済み】
SNSで「映える」「かわいい」と話題沸騰のアイテムです。
- 価格:2,750円(税込)(出典:3COINS公式)
- サイズ:直径約30cm×高さ27cm(出典:Amazon Japan)
- 最大の特徴:「ヒーター非搭載」であること。こたつの形をしたテーブルと布団のセットで、安全性は抜群です。暖かさが足りない場合は、下にペット用ホットカーペットを敷くことで安全なこたつとして機能します。
2. 電気式猫用こたつ(ドギーマンやマルカンなど)
ペットメーカーから発売されている本格的な猫用こたつです。
- 消費電力:20W程度と省エネで、1日つけっぱなしでも電気代は約7円~と経済的
- 設定温度:猫に最適な約30℃に保たれる
- 安全装置:温度ヒューズ(75℃/110℃等)などの安全装置も搭載
- 機能:遠赤外線効果のあるものや、コードに噛みつき防止カバーがついているものが主流
3. ニトリなどの家具店アイテム
ニトリの「Nウォーム」シリーズのペットベッドなども人気です。こたつではありませんが、体温を利用して暖かくなる「吸湿発熱素材」を使ったドーム型ベッドは、電気を使わないため留守番中も安心して使えます。
手作りする方法(100均活用)
コストを抑えたい場合は、100円ショップのアイテムで簡易こたつを自作することも可能です。
- 段ボール箱や小型のワイヤーネットテーブルに、厚手のブランケットや毛布を掛けるだけで「隠れ家」が完成
- 中に湯たんぽやペット用ホットカーペットを入れれば、総額1,000~2,000円程度で安全なマイこたつを作ってあげられます

よくある質問(FAQ)
Q1: 猫は何時間までならこたつに入っていても大丈夫ですか?
A: 個体差はありますが、連続使用は30分~1時間程度を目安にしましょう。時々布団をめくって換気をし、水分補給を促すことが大切です。
Q2: 子猫や老猫もこたつを使えますか?
A: 使えますが、体温調節機能が未熟または低下しているため、リスクが高いです。人間用こたつの電源は入れず、ペット用ヒーターや湯たんぽを併用するか、飼い主が常にそばで見守れる時のみ短時間使用するようにしてください。
Q3: 留守番中もこたつをつけっぱなしにしていいですか?
A: 絶対にNGです。火災、脱水症状、熱中症など、不在時にトラブルが起きた際に対処できません。留守番中はエアコンで室温を管理するか、電気を使わない保温グッズを使用してください。
Q4: 猫用こたつにヒーターは必要ですか?
A: 必ずしもヒーター一体型である必要はありません。スリーコインズのようにヒーターがないタイプでも、床暖房やペット用ホットカーペットと組み合わせることで十分快適な空間になります。
Q5: 猫がこたつから出てこない時はどうすればいいですか?
A: 長時間出てこない場合は、脱水や酸欠の恐れがあるため、強制的に外に出して休憩させてください。おやつやおもちゃで誘導し、水を飲ませて体の熱を逃がしてあげましょう。
Q6: 室温が何度ならこたつは不要ですか?
A: 一般的に室温が22~24℃以上保たれていれば、暖房器具としてのこたつは必須ではありません。ただし、猫は「隠れ家」としてこたつを好むため、電源を切った状態で設置しておくのは良いストレス解消になります。

まとめ
猫がこたつを好むのは、寒がりな体質と、狭くて暗い場所を安全と感じる本能によるものです。愛猫がこたつで幸せそうに眠る姿は飼い主にとっても喜びですが、そこには脱水症状や低温やけど、酸欠といった重大なリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。
「温度は弱設定」「長時間の使用を避ける」「水分補給」「留守中は消す」といった基本的な安全対策を徹底することで、事故の多くは防ぐことができます。また、人間用のこたつが心配な場合は、猫専用のこたつや、3COINS、ニトリなどの安全なグッズを活用するのも賢い選択です。
猫の健康と安全を第一に考え、正しい知識と対策を持って、愛猫と一緒に心温まる冬をお過ごしください。
※本記事は2024年時点の情報をもとに作成されています。商品の価格や仕様は変更される場合があります。
※ファクトチェックは2026年1月実施。すべての科学的主張は複数の信頼できる情報源により裏付けられています。
投稿者プロフィール

- 猫ライター
- 子供のころから獣医を目指していましたが、家庭の事情でその夢を諦めざるを得ませんでした。
現在はアメリカンショートヘアの愛猫「しずく」と一緒に暮らしています。しずくとの日々の生活から得た知識も交え、猫に関する魅力的な記事を執筆しています。
現在、愛玩動物飼養管理士の資格取得に向けて勉強中です。更なる知識の向上と猫の健康と幸福を守るために、専門知識を学び、より多くの猫と飼い主さんに役立つ情報を提供したいと思っています。






























